「えっ、はい。ほ、本当ですか?
はい…。原稿料なんていくらでも結構です。
何ならこっちから差し上げましょうか。
えっ、いらないなんてさすがは読売新聞社。
一生懸命やります。死ぬ気で頑張ります。
競輪競馬も自重いたします。よ、よろしくお願いいたします」

週刊読売からの連載依頼に狂喜乱舞したのは1997年10月のことだった。
それまで私は演芸作家として漫才やコントの台本ばかりを書いてきた。
知人の編集者は心配する。
「大丈夫かよ。週刊誌の連載は甘くないぞ」
「まあ、俺の場合、失うものは何もないから」
「先のことを心配しろよ。途中で打ち切りになったら作家生命の終わりだぞ」
彼の懸念は的中する。第1話の原稿を送ると、担当の編集者から電話がかかる。
「ダメです。書き直しです」
第2話も第3話も書き直し。そのとき私は初めて知った。演芸の台本と書籍では書き方がまるで違うことを。
それから編集者との壮絶な死闘が始まった。
作家にとって一番大切なのはセンスである。
ただし書き方を知らなければセンスも活かせない。
地獄の連載は2年3か月も続いた。
エンマ様に思えた編集者には心より感謝している。
あれが私の宝物になったのだから。

塾頭 畠山健二

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